水素経済の解放のカギとなる国際協力

国際協力こそが水素経済の解放のカギとなる3つの理由

 

この記事は、当初国際経済フォーラムのアジェンダに発表されたものです。

地球がこれほどまでに暖かくなったことは、人類の史上においてかつてありません。この世代の最大の脅威に対応するには、十分な思慮と注意を払った、協力的な、かつ迅速な行動が必要です。2015年12月、196か国がCOP21に集まり、この課題に挑戦しました。その成果であるパリ協定は、2050年までに地球の温度の上昇を産業革命前の水準から2℃以内に抑えることを目指した、気候変動に対する意欲的な対応でした。それから4年が経過した今、この目標の達成は、政府および国際機関と民間セクターの協力によるエネルギー生産のイノベーションによってのみ可能であることが明白となりました。近代的な社会のニーズと、環境負荷の制限を両立には、どちらの協力も不可欠です。

水素が貢献する方法

クリーンな水素エネルギー、つまり、再生可能エネルギー源と低炭素エネルギー源から生産された水素、または低い温室効果ガス排出量のエネルギー源から生産された水素は、世界の主なエネルギーミックスの一端として、パリ協定の目標達成を促し、雇用を創生し、経済を活性化します。水素は、風力または太陽光などの再生可能エネルギー源または低炭素エネルギー源により生産された場合、水素の使用場所におけるCO2排出がゼロになります。最近の マッキンゼー報告書によれば、規模を拡大した場合、水素は世界のエネルギー需要の18%を満たし、3000万人の雇用と2兆5000億ドルの売上げをもたらし、年間6ギガトン(Gt)のCO2の削減につながる可能性があるとされています。これらのメリットは、今世紀中盤において温度上昇を2℃に抑えるシナリオに資するものです。それまでの間に取り組むべき課題は、そこに到達するまでの現実的なステップを確立することです。そして、水素はその歩みを先導するものとなります。

別表1:2050年の水素ビジョン

出典:Hydrogen Council; IEA ETP Hydrogen and Fuel Cells CBS; National Energy Outlook 2016

幸い、水素技術への投資は拡大しており、革新的プロジェクトが進められています。そして、重要なステークホールダー(産業界、政府、投資家)の参画がさらに進んでいます。テクノロジーは成熟しており、今や規模拡大の時を迎えています。しかし、クリーンな水素経済のためのカギは、より国際協力と多国間協力の拡大です。地球温暖化の影響を軽減し、温暖化を止めるには、ポリシーメーカーと産業界のリーダーらが手を携え、共に取り組む必要があります。各国政府は、水素の活用を加速するために産業界に必要な権限を与えることができる法案環境を生み出し、規則を策定する権限を持っています。同時に、エネルギー供給者、電力会社、輸送機器メーカーといった産業界の関係者は、世界をよりクリーンな未来へと導く技術を開発し、供給するコミットメントを継続しなくてはなりません。それぞれに果たすべき役割が存在しますが、官民協力は、エネルギー移行のために、水素経済をアイデアから実際の起爆剤に変える唯一の方法です。

以下に、国際協力と多国間協力がグローバルな水素活用の恩恵の実現に必要である、ということの3つの理由を示します。

1. グローバルな活用は、ひとつの国や企業が成しえるものではない

グローバルな課題に対応するには、グローバルなソリューションが必要です。単一の企業、業界、政府が行動してパリ協定のビジョンを実現することはできません。民間セクターの関係者はすでに大規模な資本を動員して革新的な製品と技術を開発しています。これらの関係者は長期的インフラ投資のためのリスクシェアリングと流動性の要件に対応するために、必要な資金調達手段をすでに特定しています。

一方で、各国政府には、規制対象分野を調整し、投資とイノベーションの拡大の需要を喚起し、水素の生産と流通に伴うコストを削減することができる、固有の権限と能力が備わっています。例えば、政府は公共セクターによる水素燃料電池自動車の調達を行い、また車両の規制を制定してインフラ需要を生み出すことができます。こうした手法は、多くの国ですでに活用されており、燃料電池自動車の利用が推進され、再充電インフラストラクチャーが開発されています。これらのことで民間投資を 連鎖的に喚起 でき、生産者に継続的な規模拡大を求めるサインを送ることができます。

2. 協力の取り組み

政府の直接支援による大規模水素プロジェクトの成功例がいくつも確認されています。それらは、規制による支援、金銭的支援であるかを問わず、産業イノベーションと結びつきます。そして、今後5年間に、水素業界ではヨーロッパ、アジア、北米において数十億ドルの資金が投入されるでしょう。この投資は、水素がバリューチェーン全体にもたらす重要な利点を証明することになります。水素活用を支援する50社を超える多国籍企業のCEOの連合体である 水素協議会はこの流れを把握しており、すでに20を超える代表的水素プロジェクトを特定しています。これらプロジェクトが集合すると、7500万トンの炭素削減がもたらされ、官民協力の実行力が証明されます。

プロジェクトには、自社のパイプライン網を100%水素使用に転換する H21 Leeds City Gate Project、2023年までにドイツ首都圏の数百の水素ステーションを建設し運営する H2 Mobility、そして、再生可能電力を使用してグリーン水素(環境価値の高い水素)を生産する電解工場を建設し、福島を水素の供給センターとすることを目指す 福島水素プロジェクト が含まれています。

これらすべてのプロジェクトと、これから立ち上げられる数多くのプロジェクトにより、政府と業界の協力が未来のベンチャー開発をどのように導くかが実証されます。

3. 行動をインスパイアする協力

私たちは、協力することにより、さらに多くのステークホールダーがこの流れに加わるよう、動機を与えることができると期待しています。政策と資金調達ツールの最善の事例を策定し、利用し、共有することで、グローバルな規模の拡大と新たな投資の誘致が可能になります。

誰かが最初の何かを引き起こすまで、主だった関係者が何もせずに待ち続ける、従来からの「にわとりと卵」のシナリオを打破する必要があります。協議会は、エネルギーの移行に際し、水素がその役割を十分に果たすことができるよう、今から2030年までにグローバルな投資が2800億ドル必要であることを 確認 しました。政府は、リスクを共有する投資環境を整えるための真のパートナーとして取り組みに関わることができます。適切な規制の枠組みを策定することで、長期投資の必要であるというサインを示し、長期投資を喚起することができます。また、エネルギー政策、気候変動対策政策とパリ協定のビジョンについて、さらに真剣なコミットメントを示すことにもなります。

すでに、地域や政府レベルで調整のイニシアチブが始まっています。これには、 Mission Innovation、 リンツ宣言 と 東京宣言が含まれます。EU、ドイツ、カリフォルニアと日本では、クリーンエネルギーの未来を実現するための戦略に水素がすでに盛り込まれており、このような事例が近い将来、他にも出現すると確信しています。

私たちは、サプライチェーン全体が共に行動する必要がある複雑なエコシステムを運営しています。私たちが必要としているのは、業界の関係者が技術を開発し地域の内外にわたって普及させることができ、また、投資家が最も資金を必要とするプロジェクトに資本を投じることができ、そして、市民社会が適切な価格でイノベーションにアクセスできるような政策と奨励策です。

グローバルな課題には、グローバルなソリューションが必要です。皆さんで協力して、水素がよりクリーンな未来において不可欠な役割を果たすようになることを目指しましょう。

執筆:水素協議会共同議長( Air Liquide会長兼CEO Benoît Potier、&Hyundai Motor Group代表取締役副会長Euisun Chung)

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